作曲家 助川舞 X 指揮者 浅野亮介

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Special Interview

浅野
作曲家を目指したきっかけは何ですか?
助川
幼い頃からヴァイオリンをやっていました。
最初はヴァイオリニストになりたかったんです。
浅野
それでは、途中で方向性が変わった?
助川
はい。
演奏する時に「ミスをしちゃいけない」「もっと表現しなきゃいけない」
と思ってしまって、辛くなってしまったんです。
それでも楽譜は好きでしたし、
楽典などの理論を勉強するのも、とても好きでしたから。
浅野
影響を受けた作曲家はいますか?
助川
たくさんいますよ。
ドビュッシー、ラヴェル、バッハ…特に平均律は好きです。
ショスタコーヴィチの《24の前奏曲とフーガ》…
大学に入ってからはディティユーやリゲティ、ケージなど…
とにかく色々探してみるのが楽しいですね。
浅野
影響を受けた演奏家はいますか?
助川
それもたくさんいますが…
ヴァイオリニストのアンネ=ゾフィー・ムターは好きですね。
浅野
ほとんどミスをしない、そして、ものすごく表現力の高いヴァイオリニストですよね。
助川
はい。
小さい時に私にできなかったこと…
それをできてしまうところが理想なのかもしれませんね。
浅野
尊敬している人はいますか?
助川
これもいっぱいいすぎて…。
演奏会を聴きに行って感銘を受ければ、その演奏家さんをとても尊敬します。
展覧会を見に行って印象に残った絵があれば、その画家さんをとても尊敬します。
人に感動を与えるものを作れる人は、それだけで尊敬してしまいます。
助川舞
浅野
休みの日は何をしてますか?
助川
散歩したり…
最近は映画、特に映像作品的なものに興味が湧いています。
それから、絵を見るのが好きなので、展覧会に行ったりしていますね。
浅野
視覚的な芸術がお好きなんですね。
助川
あまり上手くはありませんが、自分で描いたりもしますよ。
街を歩いていて印象に残るファッションをしていた人を記憶に焼きつけて、
後で思い出しながら描いてみたり(笑)
浅野
作曲家になっていなければ、どんな職業をされていたと思いますか?
助川
建築家です。
浅野
やっぱり構築する…ということが大好きなんですね(笑)
助川
はい。ガウディなどは特に好きですね。
私が作曲する時にいつも考えている「自然をなるべく加工せずに作品に活かしたい」
というアイディアを体現している建築家だと思います。
浅野
自然なものをあるがままに…ですか。
助川舞
助川
はい。
ですから、実は「拍節」や「拍子」のような縦に区切る仕組みも好きではないんです。
もちろん、それがないと成り立たない部分もありますから使いはしますが。
浅野
区切りがない、あるがままの自然を音楽にしたい…というのは、
少し東洋的なアイディアにも聴こえますね。
助川
そうかもしれません。
宇宙や世界には開始点や終着点はなくて、ずっとずっと続いていく、
その連続を切り取っただけのような作品を書きたいと思っています。
浅野
そのアイディアは今回初演される《溟渤を織る星の糸》にも反映されている?
助川
はい。
《溟渤》とは「大きな海」を意味する言葉ですが、
単に「大海」という以上の果てしない「終わりも始まりもない空間」という意味を込めて、
この言葉を使いました。
浅野
では、《星の糸》とは?
助川
今回の作品は、12星座の明度、大きさ、距離、位置などを数値化して、
その数値を元に音楽を作りました。
星…宇宙という自然そのものを音楽にしたかったんです。
浅野
来月3月14日には関西で助川さんのチェロ独奏曲である《緒》が再演されますが、
《緒》や《糸》という言葉にこだわりがあるのですか?
助川
はい。
さきほども言いましたように、「連綿と繋がっていくもの」を作品として表現したいのです。
《緒》はそれを旋律で表現しました。
今回の《溟渤を織る星の糸》は、旋律らしい旋律はないかもしれませんが、
横に流れる音を主体に書いています。
縦のハーモニーは横の流れの積み重ねであり、調和なんです。
助川舞
浅野
今回の作品は5分程度で、時間的にはそんなに長くありませんよね?
助川
はい。
「これ以上長く書けば何かが失われる…」そう感じたところで筆を置きました。
浅野
今回の作品の聴きどころは何でしょうか?
助川
私が作曲する時は、いつも視覚的なイメージが先行します。
それを音楽にすることが、私の作曲家としての手法です。
ある神話によると、夜空は一枚の織物、タペストリーなのだそうです。
今回はそのようなイメージを音楽にしてみました。
私の作品を聴いて下さった方が夜空を見たくなったら、大成功ですね。
でも、そういうことは気にせず、
オーケストラから生まれる音に身を浸してみて下さい。
浅野
これから、どのような作曲家を目指されますか?
助川
とにかく色んなジャンルに挑戦してみたいです。
複雑に聴こえることもあるかもしれないけれど、
やっていることは単純、それでいて新しく聴こえる…
そういう作品を書くことが、今の理想ですね。
浅野
作曲家として、どのような評価を受けたいですか?
助川
他の人にどう思われるか…そこまで考える余裕が、まだありません。
自分が生きることで精一杯なので(笑)
如何に自分が気持ち良く死ねるか…ということばかり考えています。
精一杯生きて、その延長に死がある。
もしかしたら、輪廻して、また生まれることもあるかもしれません。
そして、また死ぬ…
終わりもないし、始まりもない、
こういうアイディアは作品だけでなく、私の根底に流れるものなんです。
浅野
最後に、3月7日の演奏会を聴きに来てくださるお客様にメッセージを。
助川
うーん…
自分の作品のことを「素晴らしい作品だから聴いて下さい」
とは中々言いづらいのですが…
それでも一生懸命書いた作品です。
何かを感じていただければ幸いです。
助川舞

助川さん、ありがとうございました!

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