2020年2月、WHOによって「COVID-19」と名付けられた新型コロナウイルス感染症は世界中に広がり、パンデミック(感染爆発)となりました。この感染症は人々の身体的な健康のみならず、精神的にも、経済的にも、そして文化的にも大きな被害をもたらしています。
私たちは、このような状況の下でも音楽には人々の心を潤し豊かにする力があると信じています。そこで多くの作曲家の方々と協力し、感染の危険を避けながら、それぞれの自宅から通信技術を活用して合奏できる作品の制作に取り組みました。
音楽は有史以前から存在し、常に人と共にありました。使われる楽器も、音階も、記譜法も様々ではありますが、その時代、その地域、その文化にとって最も適した形で生み出され、人々の心に寄り添ってきました。それは如何に厳しい時代であろうとも変わりありません。 現状において、その一つの形態が、いま多くの音楽家たちが行っているリモート(遠隔)演奏であろうと思います。
この企画では、完全にリモート演奏のために書かれた作品を皆様にお届けいたします。困難を克服しようと生み出された新しい音楽が、同じく困難に立ち向かおうとする皆様を少しでも勇気づけるものになれば幸いです。
2020年5月31日
アンサンブル・フリー代表 浅野亮介
動画をクリックするとYouTubeでの再生が始まります。
《室内合奏曲(2020)》は、2020年4月7日に日本政府より発出された緊急事態宣言を受け、全ての演奏会、および関連する練習が中止となる状況の下で、アンサンブル・フリーによって山本和智氏に委嘱されたリモート演奏のための新作である。
感染症の拡大により世界中で人々が緊張と孤立を強いられる中、「誰もが他者と音楽を共有できるように」という作曲家の意図により、楽譜を読めない人でも、楽器を演奏できない人でも、屋内で全ての人がリモート合奏に参加できるよう専門性を排した簡潔な指示書のみで構成された作品となっている。
作品中で用いられる日用品、特に「マスク」については、「この2020年に一体、何が起こったのか、その痕跡を作中に記録として残しておきたかった」と作曲家は言う。
日用品から生まれる音だけで構成されながら、世相を反映した緊張感と他者との繋がりを希求する人間の切なる願いを表現する本作品は、如何なる音をも音楽にしてしまう山本和智氏の現代作曲家としてのセンスと技術の高さを証明している。
なお、本作品は2020年4月21日に委嘱され、同年4月24日に書き上げられた。
今回の作品は、アンサンブル・フリーの委嘱により、新型コロナウイルスによるパンデミックの中、リモートワーク演奏のために作曲された。
遠隔での多重録音といえば、普通は上書きか、クリックを聴きながらというものしかない。「だったら結局生の方がいい演奏になるやん!」って話で、それは絶対に嫌。でも逆に、このリモートという環境だと、アンサンブルなのに「お互いに聴き合わない」というものが可能になる。奏者の時間、音の感覚。それぞれみんな違う感覚を持っている。その一人一人の違い、「ズレ」を聴かせることができる。だから絶対に、同時に聴きながら、見ながら合わせるということはしないし、指揮者にも合わせない。
音楽において、「ズレ」というのは、常に重要な興味深い音楽の要素としてあり続けた。それは、多声部の音楽やミニマル音楽ではもちろんのことだが、例えばユニゾンであったとしても同様である。ユニゾンにおいても、合奏という演奏形態によって、各々の発声、声質、楽器、タイミング…などの僅かなズレの集積によって、形容し難い空間としての音響が生まれる。それらは、これまで、同じ空間で「お互いに聴きあう」という演奏によって生まれるものであった。
しかし、今回はリモートワーク。この遠隔の環境では、無理やりその場で同じ時間を共有することはないのだ。
奏者は、全く同じ楽譜の上で演奏するが、各々が好きなテンポで、好きな音を選択し、全くバラバラに演奏をする。誰かの音を共有するわけでもなく、受け取ることもないわけだから、全く予想だにしない、総合的な「ズレ」の音楽が生まれる。
梅本佑利
(また、この曲は演奏会形式としても成立するように作曲した。この場合、奏者同士は時間を共有し、必然的に周りの音楽を聴きながら演奏するため、無意識的にも意識的にも、周りの音楽が自らの音に反映されるだろう。しかし、それではいままでのアンサンブルとほぼ変わりがなくなってしまう。そこで、コンサートで演奏する場合は、時間を共有しないで演奏する方法として、耳栓を使用する。)
This piece of music was commissioned by Ensemble Free and was composed amidst the COVID-19 pandemic.
When it comes to remote performances, some may think of editing, rewriting, and clicking a few buttons. Perhaps some may prefer live concerts, but not this time. Remote performances give us the chance for musicians to NOT listen to one another. Performance time and musical sense. Each performer has a kind of their own. These little differences that occur are what makes the music unique. That’s why they don’t play in sync or look at the conductor.
These discrepancies in music has always been an interesting element. Vocal choirs and minimalistic music may display it obviously, however it can also show through unison. The musicians' distinct style, voice, volume, instrument, timing… all these elements are different across each performer. These all combine to create an indescribable acoustic in an environment where listening to one another is the main key.
However, in current circumstances remote work has become the norm. The difficulty to find time altogether and share music in the same environment is higher than ever. In this remote performance, you will see that same piece of music is being played, however the style is solely up to the musician. They will have no influence on or from others. An unexpected and harmonious gap is born.
Umemoto Yuri
(This piece was composed so that it could be performed remotely. In a normal performance, it is inevitable that performers listen to one another, therefore there is no way the musician will not be influenced. If this was to be performed on a stage, the musicians will be required to wear ear plugs. )
単純に楽しい曲です。
カスタマイズしやすい曲だと思うので、
いじりたい人いたら気軽にいじっちゃってください。
特にラッパー募集中です。
(BPMは88くらいです)
旭井翔一
A small and fun piece!
It’s open to editing and customising
so if anyone is down for it go ahead!
We’re also looking for a rapper :)
(The BPM is around 88)
Asai Shoichi