ユダヤ系アメリカ人の音楽家レナード・バーンスタイン(1918-1990)には、まず指揮者というイメージが先行する。彼は長年に渡ってニューヨーク・フィルハーモニーのタクトを振り、1969年に同オーケストラの常任指揮者を辞任した後も活発な客演指揮活動を行った。また、現在のマーラー演奏のスタンダードを築いたと評される2種類のマーラー交響曲全集を録音しており、H. v. カラヤンと並んで20世紀を代表する指揮者の1人に数えられる。しかし作曲家としても、ミュージカル《ウェスト・サイド・ストーリー》(1957)に代表されるような、ポピュラー音楽やジャズの語法を取り入れた作品を数多く残したことで有名だ。
独奏クラリネットとジャズ・アンサンブルのための《プレリュード、フーガとリフ》は、ジャズ・クラリネット奏者ウディ・ハーマンのビッグ・バンドの委嘱により、1949年に作曲された(1952年改訂)。楽曲完成当時、ハーマンのバンドは一時的に解散していたため、初演はベニー・グッドマンを独奏に迎えて1955年に行われ、この楽曲は彼に献呈された。独奏クラリネット、サックス、トランペット、トロンボーン、ピアノ、打楽器、コントラバスという典型的なビッグ・バンドの編成を取るが、即興演奏が行われる箇所はほぼなく、総譜からは作曲者がジャズ的なパッセジを細かく書き示した様子がうかがえる。
全体は、金管楽器のための「プレリュード」、サックスのための「フーガ」、アンサンブル全体のための「リフ」の3部分で構成されており、全て連続して演奏される。「プレリュード」は、中間部を除いてほぼ毎小節変化する拍子が特徴的である。
5本のサックスによる「フーガ」は、ヘミオラを用いた拍節の面白味がある。また、リズミカルで和声的な縦の動きと旋律の横の動きが同属楽器で同時に演奏されることで、繊細なテクスチュアが生み出されている。最後の部分のタイトルである「リフ」とは、そもそもジャズとスウィングの一般的な仕組みで、旋律的および和声的な短いフレーズの反復を指す用語である。まずピアノと独奏クラリネットで始まり、そこに徐々に楽器が加わりトゥッティへ向かうという、一種のジャムセッションのような要素が見られる。楽曲末に設けられた、「3回以上反復すること」と指示された5小節のフリー・セッション部分では、どのようなアドリブが繰り広げられるのか楽しみにお聴きいただきたい。
文責・内藤 眞帆