- 浅野
- 本日は、薮田さん、會田さんお二人への同時インタビューです。
- 薮田
- よろしくお願いします。
- 會田
- よろしくお願いします。まさに、鼎談ですね。
音楽家としてのきっかけ
- 浅野
- 薮田さんはジュネーヴ国際コンクールで優勝された世界的作曲家ですが、作曲家を目指したのはいつごろからですか?
- 薮田
-
作曲を習い始めたのは、高校3年生のときですね。
そもそも、作曲というものについて音楽大学で学ぶ、ということ自体その当時に知りました。
- 浅野
- そんなかたが今や世界レベル・・・!
- 薮田
- 将来をどうすべきか迷ったときに、音楽大学出身だった母親に「どう?」と勧められました。
- 會田
- お会いしたことがありますが、あのお母さまならそうおっしゃいそうですね!
- 薮田
-
当時は、音楽を学ぶ時間をストップウォッチで10時間きっかり作りました。
朝はバッハのインヴェンションなどを研究し、昼からは和声を学び、そして、いろんな曲を聴く時間をしっかりとりました。
- 會田
- ・・・すごい!
- 浅野
- 徹底されていますね・・・。影響を受けた作曲家はいらっしゃいますか?
- 薮田
- 西村朗先生です。先生の作品はすべて勉強しました。
- 會田
- 西村先生の曲は、僕も演奏したことがありますが、本当に綺麗な譜面ですね。
- 薮田
-
それに、いろいろ実験して失敗したことはもう繰り返さない、というスタンスも僕自身、意図的にやろうとしています。
たとえば、1年半ごと、というように期間を設けて新作を書き続けています。
- 浅野
- なるほど、そのプロセスも学ばれた、と。
- 薮田
- それと、大学を出た後に音楽の現場で作曲家がどうあるべきか、ということについては、池辺晋一郎先生に学ぶことが多かったですね。
- 浅野
- たとえば、どのようなことですか?
- 薮田
- 練習の現場に、誰よりも早く駆けつけて、演奏者と交流することで、アイデアを交換したり、新しい仕事につなげたり、ということですね。
- 會田
- そういえば、池辺先生の打楽器独奏曲に「スネアは唸り、そして飛翔する」という作品がありますが、劇伴音楽の現場で吉原すみれ先生に「ずっとロールを演奏してください」と言ったことに端を発しているそうです。
- 浅野
- 會田さんは打楽器をいつから始められましたか?
- 會田
- 小学校6年生の時に、鼓笛隊で太鼓を触ったのがきっかけです。それまではヴァイオリンをやっていました。それで、ヴィヴァルディなどを通じてバロック音楽に親しんだりしました。
- 浅野
- でもヴァイオリンより太鼓が面白かった、と?
- 會田
- 面白かったですね。
- 浅野
- メロディとか、ないですよね?
- 會田
- いや、それこそがむしろ「音楽を支配している」と感じましたね。
- 浅野
- 小学生にしてそう感じるとは・・・
- 薮田
- かっこいい(笑)
- 浅野
- 打楽器演奏家として活動していこう、と決めたのはいつですか?
- 會田
-
中学2年生の時に、吉原すみれ先生が演奏する石井眞木の「Thirteen drums」に出会った時ですかね。太鼓のソロでここまでできるのか・・・と。
同時期にツトムヤマシタさんが演奏するハンス・ヴェルナー・ヘンツェの「刑務所の歌」にも出会い、同じ打楽器のソロでもいろんなタイプがあると知り、それ以降、吹奏楽部の打楽器倉庫を占拠して、即興演奏などに没頭したりしました。
嫌なものは、嫌。やりたいことをやりたい、という気持ちは今も変わりませんね。
- 浅野
- 好きな曲はありますか?
- 會田
- 八村義夫の「星辰譜」ですね。チューブラーベル、ヴィブラフォン、ピアノ、ヴァイオリンの四重奏曲です。2度演奏しました。
- 浅野
- ソリストとしてのイメージをもっていましたが、アンサンブルもよくされるんですね。
ちなみに、もし打楽器奏者じゃなかったらどんな職業になっていましたか?
- 會田
- それは、もう小説家です!
- 浅野
- 断言しましたね(笑)
- 會田
- 今でも、なりたいぐらいです。
- 浅野
- ちなみに、好きな小説家は?
- 會田
- 高橋和巳ですかね。文章も上手いし、本当に賢いんだなぁって思います。
「音楽家としての思い、スタンス」
- 浅野
- 作曲をしていて辛かったことはありますか
- 薮田
-
過去のことでいえば、2010年のときの日本音楽コンクールは辛かったです。
前年に2位だったので、もう一回受けようとしたときに、「1位をとらないと!」というプレッシャーがありました。「Recollection」というオーケストラ曲を書いたのですが、これが2位だったときが辛かったですね。
- 浅野
- しかし、遂には日本どころか世界的なコンクールで優勝されましたね。
- 薮田
- あのときは、「よかった」という気持ちよりも、むしろホッとする気持ちが大きかったです。そろそろ結果を残さないと続けられないな、と
- 浅野
- 作曲の喜びについてはいかがですか?
- 薮田
- とにかく、集中できることですね。作曲しているときが本当に充実しています。
- 會田
- それ、薮田さんの作品を演奏していると、とっても伝わってきます。
- 浅野
- 締切とかには悩まされませんか?
- 薮田
- 朝起きる時、それから夜眠る時に必ず曲のことを考える癖をつけています。すると普段から曲を考えるプロセスが生まれるので、締切には悩みません。
- 會田
- 薮田さんは本当に筆が速いですよね!演奏者としてありがたいことです。
- 薮田
- 僕は、音楽は結果が大事だな、と思っているんですよね。
- 會田
- 作曲家はそうですよね。結果自体が作品として現れますからね。
- 浅野
- 演奏家も、リサイタルというかたちとしての結果がありませんか?
- 會田
- いや、結果ではないと思います。あくまで、一里塚ですね。音楽は、届いたお客様各々に感じてもらうものだと信じています。たとえばコンクールで1位を獲るだとか、そういうのはやはり一里塚に過ぎないと思うわけです。
- 浅野
- お二人は対照的ですね・・・。
- 會田
- 日本現代音楽協会のコンクール「競楽Ⅸ」で2位をとったときに、「これ以上、余計な勲章は要らないな」と思いました。それよりも自分自身演奏を重ねることが、音楽家としての務めだ、と。
- 浅野
- おのおの信ずる道があるんですね。
- 會田
- だから、気が合うんだと思います
- 薮田
- 本当に、會田さんはいろいろな能力を持っています。だからこそコンクールなんて受ける必要がない、と僕も思います。
- 浅野
- お互いを尊敬しあう、理想的な関係ですね。今後のお二人の活動の展望について聞かせてください
- 會田
- 今生きている作曲家と一緒に、よい音楽を伝えていくことですね。やはり、打楽器音楽の作品数が少ないので。
- 薮田
- 僕は、現代音楽もジャズと同じようにひとつのエッセンスになっていくと感じています。そのエッセンスのバランスをとりながら作曲を続けたいですね。そして、僕の音楽に関わった人たちが幸せになってほしいと思います。
「作品について」
- 浅野
- 「anima」についてコメントをいただけませんか。
- 薮田
- 2008年に書いた初めてのオーケストラ曲で、リズムをかなり重視しています。
- 會田
- 若さが溢れてますよね。
- 薮田
- 演奏者の集合体であるオーケストラを生で聴く、という視覚的な効果も大切にしています。弦楽器パートのかたが一斉にガッガッガッと弾く箇所など、その例ですね。
- 浅野
- 會田さん、「Gush」についていかがですか。
- 會田
- 色彩感が、まるで万華鏡のようにどんどん変化していく音楽ですね。リズム自体の骨格がはっきりしている強靭な部分と、感傷的でフラジールな儚さという、一見相反する部分が触れ合った時にどうなるか・・・
- 薮田
-
詩人ですねぇ(笑)
打楽器協奏曲の在り方を考えたんですよね。「ドッカン!バコーン!」というのではなく、ヴァイオリン協奏曲のような繊細さをあわせもったような・・・。
- 會田
- 前時代的なおおざっぱなものではないですよね。
- 浅野
- 新時代ということですね。
- 會田
-
そうですね、そして本当に高度な作品だと思います。過去に唯一ある例としては武満徹のマリンバ協奏曲「ジティマルヤ」でしょうか。それに薮田さんが挑戦し、そして成功したんだな、という感慨があります。
ヴィブラフォンが「ジャカジャカジャ~ン!」で始まると70年代チックだし、「ポロポロポ~ン♪」だと80年代っぽいし、そのいずれでもない冒頭に、湯浅譲二先生のよくおっしゃるところの“未聴感”を大切にされているなぁ、と思います。
「お互いについて & アンサンブル・フリーについて」
- 浅野
- 會田さんにとって、薮田さんはどんな作曲家ですか?
- 會田
- なんというか・・・焦燥感を受けますね。「Gush」も、脱兎のごとく俊敏な身体能力を要求されつつも、メランコリーかつ感傷的な和音、旋律がちりばめられていますし。
- 薮田
- (笑)
- 浅野
- 生き急いでいらっしゃる?(笑)
- 薮田
- それは本当にそう思いますね(笑)僕は、會田さんと出会って作曲家人生のピークに入ったと思いました。
- 浅野
- 薮田さんにとって、會田さんはどのような演奏家ですか?
- 薮田
- 本当にいろんな能力を持っています。そもそも音楽家として、現代曲の初演に取り組むというのは、情熱がないと無理だと思うんです。
- 會田
- 本当に大好きだからやっているんですよ!
- 浅野
- 會田さんの情熱は、火傷しそうなぐらいです(笑)
- 薮田
- 火傷しそうな情熱(笑)まさにその通り!
- 會田
-
光栄です! でも、作曲家にとっては賭けですよね。出来上がった作品を僕らのような怪しげな人間に渡し、それを理解してくれるかどうか・・・。
だから僕ら演奏家は常に理解に努めないといけません。
- 浅野
- アンサンブル・フリーについての印象はいかがですか?
- 薮田
- 2月の練習にお邪魔した時、「anima」冒頭の演奏を聴き「素晴らしい」と感じました!
- 浅野
- 勇気づけられます(笑)
- 會田
- 本当に、熱いですね。対峙し合うもの、まさに戦いだとおもって、僕ももっと燃え上がりますよ!
「最後に」
- 浅野
- 演奏会にお越しいただくお客様にメッセージをお願いします。
- 薮田
-
「anima」は、やっぱり生のオーケストラの演奏というものを、できるだけ、客席の前のほうでかぶりついて体験してほしいですね。
「Gush」は、ヴィブラフォンという楽器の幅広い表現を楽しんでください。會田さんにとっても僕自身にとっても、今、この瞬間しかできないこと、本気でやり通せる音楽を書き込みました・・・すごい音の数ですし!
- 浅野
- 指揮者として、背筋が伸びる思いです。
- 會田
-
本当に楽しみです。怖いもの見たさでもいいので、冒険する気持ちでお越しください。この演奏会を訪れた前と後では見える世界がきっと違うはずです!
ぜひ会場にお越しください!
- 浅野
- ありがとうございました!
「オーケストラメンバーからの質問コーナー」
- Q
- 打楽器の魅力って?
- 會田
- 誰でも必ず音が出せるということですかね。机をたたいても音が出るし。日常に潜んでいますよね。
- Q
- ヴィブラフォンの魅力は?
- 會田
- 官能的なところですね。また、音域が限られているという制約があるからこそ、逆に自由自在な表現が生まれるところも魅力です。
- Q
- たつの親善大使としてどんな活動をされていますか?
- 薮田
- 赤とんぼの作詞者である三木露風さんの出身地ということもあり、歌曲を書いたりして、アピールに務めています。
- Q
- カメラ(写真撮影)が好きな理由は?
- 薮田
- レンズを通じて構成する試行錯誤のプロセスが作曲に似ていることですかね。
- Q
- 自分を動物に例えると?
- 會田
- 不思議な質問ですね(笑)そうですねー。レッサーパンダですかね。こじんまりしていて生態がよく分からない・・・(笑)
- 薮田
- 僕は、チワワになりたいです!
- 浅野&會田
- なりたいんですか(笑)
- 薮田
- 実家で飼っているんですが、可愛くて!
薮田さん、會田さん、ありがとうございました!