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ENSEMBLE FREE
CONCERT
EAST第21回演奏会
WEST第39回演奏会
リモート・オーケストラのための新作演奏会
ORCHESTRA
CONDUCTOR
COMPOSER
INTERVIEW
HISTORY
WEST
EAST
NEWS
ピアニスト
黒岩 航紀 X
指揮者
浅野 亮介
Special Interview
浅野
ピアノを始めたのは、いつですか?
黒岩
4歳の時です。大好きな姉が町のピアノ教室に通っていて、僕も姉の真似がしたくて通わせてもらいました。そしたら、僕のほうが姉より夢中になってしまった…という感じです笑
浅野
プロを目指したのは、いつですか?
黒岩
うーん…正直なところ、自分が「プロである」という自覚はありません。
もちろん演奏をしてお金をいただく…このことに対して最大限の責任感を持って仕事に臨んでいます。しかし、僕の中ではピアノは最大の趣味であり、「一人の愛好家」という意識が強いのです。自分はまだまだ「プロ」ではありません。
浅野
黒岩さんにとって「プロ」とは何でしょうか?
黒岩
仕事としてお金を稼ぐ…という以上に、高い技術をもって聴いて下さる方に大きな感動を与える存在です。
その点において、僕にはまだまだ学ぶべきことがある。「プロ」というと、何かある一定の基準を満たした人のような感じがしますが、僕はそのような表現は好きではありません。
僕の先生も同じことを仰っていました。もしかしたら一生、「プロ」と自認することはないかもしれません。
常に目指し続ける存在ですね。
浅野
もし音楽の道を進んでいなければ、どんな仕事をしていたと思いますか?
黒岩
サラリーマンになっていたかもしれませんね。
でも、音楽を仕事とするかどうかにかかわらず、音楽は大好きなので、愛好家として絶対演奏していると思いますし、大好きな音楽家の追っかけになっていたかもしれません笑 でも、ピアノじゃなかったとしても、他の楽器の奏者にはなっていそうです。
音楽が本当に好きなんです。
浅野
どんな音楽家が好きなのですか?
黒岩
アルゲリッチやホロヴィッツ…あと、キース・ジャレットも大好きです。
浅野
キース・ジャレットはジャズのピアニストですね。
黒岩
はい。特にジャズの分野で活躍した人です。でも、僕は「ジャズ」とか「クラシック」とかのジャンル分けも好きではありません。ジャンルの壁を取っ払いたいのです。
クラシック音楽もよく「敷居が高い」とか「貴族的な趣味」と言われますが、そんなことはありません。クラシックを普段は聴かない人にでも「カッコいい!」「こんな音楽があるんだ!」と思ってもらいたい。そんなピアニストになりたいです。
浅野
今までの24年の人生の中で、一番嬉しかったことは何ですか?
黒岩
そうですね…コンクールが終わった後かな…
浅野
コンクールで優勝した時ですか?
黒岩
いえ、違います。小さい時からいくつもコンクールに出てきましたが、賞を取るか取らないかはあまり喜びとは関係ありません。
そうではなくて、コンクールが終わった後って、見ず知らずの方に声をかけてもらえることが多いんです。「今日の演奏、よかったよ!」と言われた時は、本当に幸せです。聴いていただいている方からの純粋なお褒めの言葉ほど嬉しいものはありません。それがあるからこそ僕は音楽を続けてきました。僕の原点です。
浅野
逆に一番悲しかったこと、辛かったことはなんでしょうか?
黒岩
震災の時ですね…。僕自身の家族や親類が被害にあったわけではないのですが、あまりの被害の大きさに絶望しかけました。
僕自身、「音楽の持つ力」を信じ、それを信念として生きてきました。しかし、あんなにも大きな被害の前で自分ができることは何もないのではないか、音楽って無力なんじゃないか、人を助ける力なんて無いんじゃないのか、そんな思いが頭をよぎった時が本当に悲しく、辛かったです。…でも、信じてやるしかないですよね。僕には音楽しかできないのだから。
震災の後、まだ傷跡の残る仙台で演奏活動もしました。その時、お客様には大変喜んでいただいて、後から「あの時の演奏にいまだに勇気づけられます」というお言葉もいただきました。その言葉を信じてやるしかない。
自分の力で人なんか救えないと思っちゃいけない。どこかで誰かが救われているかもしれない…そう思ってやるしかないですよね。
浅野
今回演奏する「ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番」とは、どんな曲でしょうか?
黒岩
「魂」です。
浅野
魂…。それは作曲家の?それとも演奏家の?
黒岩
全て。人間としての全てです。単にロマンティックなだけの曲ではない。ありとあらゆる人間の感情、複雑な思いが込められた作品です。
だから、演奏家がどのような魂をもって、どのような心情で作品に向かうかによって、響きが180度変わってくる作品だと思います。複雑な内容をどのように表現するか、とても難しい作品です。
浅野
黒岩さん自身は、どのような心情で作品に向かうか決めていらっしゃいますか?
黒岩
はい、ある程度決めています。でも、今まで何回か、この曲を演奏させていただく機会に恵まれましたが、やはりその都度、少しずつ自分の演奏は変わっています。次の演奏会でも、また少し変わるでしょう。その時にできる音楽をやりきろうと思います。
浅野
「ここを聴いて欲しい!」という聴きどころはありますか?
黒岩
もちろん全部が聴きどころですが、敢えて言うなら弱音のところですね。
この作品はオーケストラが豪華に鳴り響くカッコいいところも、ピアニストに高い技術を要求する派手なところもありますが、僕は音が少ないところこそ聴きどころだと思っています。そういうところで泣かせたいですね。
浅野
これから、どんな音楽家を目指していきたいですか?
黒岩
常に親近感を持ってもらえる音楽家です。ピアニストとは孤独な存在です。一人で研鑽を積み、研究を重ねていかなければいけません。超一流の演奏家を目指したい。でも、その一方で、聴いて下さる方の目線というものを忘れたくありません。人と接しながら成長していく…そんな音楽家になりたいですね。
浅野
最後に、11月26日の演奏会にお越し下さる方にメッセージをお願いします。
黒岩
今回の演奏会はラフマニノフだけでなく、他の作品もなかなか耳にすることはできません。聴いて損のないプログラムだと思います。ロシア音楽の世界に浸っていただきたい。絶対に来て後悔させない演奏にするつもりです!
黒岩さん、ありがとうございました!
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