ソプラノ 藤井 玲南 X アンサンブル・フリー 団員
(c)Shigeto Imura
Special Interview
- 団員
- それでは、よろしくお願いします!
- 藤井
- よろしくお願いします!
- 団員
- 今回は、尼崎市の「あましんアルカイックホール」での公演ですが、藤井さんは関西にいらっしゃったことはありますか?
- 藤井
- 京都と奈良はあるのですが、大阪や兵庫は初めてです。
- 団員
- 尼崎は市外局番も06ですし、大阪からも本当に近いですよ。
- 藤井
-
そうみたいですね!梅田からは20分ほどで行けると、調べて知りました。
育ちは横浜ですが、両親が広島出身なので、子供の頃はよく新幹線に乗って広島へ行きました。
新大阪や新神戸を通過する度に、いつか行ってみたいなぁと思っていました。
実はお笑いが好きで、関西弁を聞くのも好きなので、伺うのをとても楽しみにしています!
藤井さんご自身について
- 団員
- 歌を始められたきっかけは何ですか?
- 藤井
-
音楽との出会いは、幼い頃に通っていたヤマハ音楽教室でした。エレクトーンと、その延長でピアノも習っていました。
中学3年生の時、地元のケーブルテレビ番組で「子どもの音楽会」が企画され、そこへ出演してみないかとお話を頂きました。私はピアノで出演するつもりでしたが、ピアノを弾く人が多いことを理由に、独断で母親が歌部門で申し込んでしまったのです!
「この子は昔からよく歌ってたし、歌うのも好きなんだろう」って(笑)
人前で歌ったのはこの時が初めてで、曲は中田喜直さんの《夏の思い出》でした。
その後、ピアノの先生に声楽の先生を紹介して頂き、本格的にレッスンを受け始め、歌の世界へ足を踏み入れましたね。
- 団員
- 普段はどのような活動をされていますか?
- 藤井
- コンサートなどで演奏活動をする傍ら、国立音楽大学で非常勤講師をしています。
- 団員
- 好きな作曲家はいますか?
- 藤井
- とにかく、ブラームス!でした。かつては。
- 団員
- 今は?
- 藤井
-
様々な作曲家の楽曲を知っていくにつれて、一人に絞るのが難しくなってきました。
もちろん今でもブラームスは私にとって特別な作曲家ですが、
世の中には本当にいろんな素敵な曲が沢山あって、好きな作曲家も増えました。
- 団員
-
今回の公演では、マーラーもとりあげます。
声楽と器楽の世界を融合させた作曲家の一人ですよね。
- 藤井
- マーラーも大好きです!交響曲第4番のソロはいつか歌ってみたいですね!
- 団員
- 音楽以外でお好きなことはありますか?
- 藤井
-
音楽から離れるのが難しいのですが、歌うこと以外では、オーケストラや器楽の作品が好きでよく聴いています。音楽以外となると・・・本を読むことですかね。
以前、ロシア歌曲を演奏する機会を頂いた際には、トルストイの作品を読んでいました。『戦争と平和』は、あまりにも長くて途中でストップしていますが(笑)
- 団員
- 声を保つうえで気をつけられていることについて教えてください!
- 藤井
- やっぱり体調管理ですね。風邪をひかないように、喉を乾燥させないように、夏場でも寝るときはマスクを着用しています。
- 団員
- 歌を歌うことについて大事にされていることについてお聞かせください。
- 藤井
-
演奏者は、音楽を通して作曲家の想いを代弁する立場でありたいと考えています。
あまり上手くいかなかったと感じた本番って、振り返るとどこか欲が出てしまったのかなと。自己主張しすぎないで、音楽を第一に考えることが大切だと思います。
また、歌手は唯一言葉を直接伝えられる楽器なので、やはり言葉が明瞭に聞こえることを重要視しています。
- 団員
- オーケストラと共演するにあたってのお気持ちはいかがですか?
- 藤井
-
先ほども言ったように、とにかくオーケストラが大好きなので、とても楽しみです!
大人数の奏者が一緒に心を合わせて音楽を作り上げる、そのコミュニケーションを大事にしたいと思います。
「小倉百人一首」“悲歌集”について
- 団員
- 藤井さんが歌われた山中千佳子さんの《ことほぎ》を聴きました。
- 藤井
- あら!ありがとうございます!
- 団員
- 今回の《小倉百人一首》も日本歌曲ですが、西洋歌曲との違いや魅力についてお聞かせください。
- 藤井
-
やはり、母語である日本語の歌詞なので、ダイレクトに共感できることですね。
900年近く前の昔の方々の気持ちを歌うというのは新鮮でもありますが、どんなに時を経ても、やっぱり“恋する気持ち”は変わらないというのがいいですね。
- 団員
-
作曲者・薮田さんも「小倉百人一首のもっている儚い世界や人間の普遍的な感情に強く惹かれた」とコメントされていますね。
さて、作曲家・薮田翔一さんの印象についてお尋ねしてもいいですか?
- 藤井
-
不思議な方だなぁと思いました(笑)
すごく気さくで礼儀正しい方ですが、どこか宇宙的な感じがしました。
- 団員
-
アンサンブル・フリーでは2年前に薮田さんの作品(anima、Gush)を初演したのですが、
たしかにビッグバンみたいな感じでしたね(笑)
- 藤井
- 作曲家は作品を自分から生み出すという立場なので、演奏者とはまた違った感性を持っていらっしゃるかもしれませんね。
- 団員
- 当団アンサンブル・フリーについての印象はいかがですか?
- 藤井
-
現代作曲家の作品にも積極的に取り組んでらっしゃいますし、若いソリストを起用されていたりと、とてもチャレンジ精神がある方々だなと感じています。
「有名な曲をやりたい」というだけではない、ただならぬ情熱を感じますね!
- 団員
-
ありがとうございます!
さて、今回共演させていただく《小倉百人一首》の“悲歌集”のうち、お気に入りの歌について、どんな情景に感化されたのかも含めて教えていただけませんか?
- 藤井
-
83番「世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる」ですかね。
恋愛のことを歌ったものが多くを占める中での、この歌は異色を放つ歌だと思いました。覚悟をもって山に入っていたのに、やっぱり捨てきれなかった人間の部分、というのがいいですね。
曲自体は短く、音域もそれほど高いわけではないのですが、人間の本質に迫る力強や激しさを感じます。
- 団員
- ちなみに悲歌集に限らず、お好きな百人一首の歌はありますか?
- 藤井
-
72番「音にきく 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ」ですね。
昨年、薮田さんのコンサートで歌わせていただきました。
お年を召した女性(紀伊・約70歳)が、若いモテ男(藤原俊忠・約30歳)の歌に対して切り返した歌ですよね。短い中に言葉遊びを取り入れながら詠んでいて、とってもカッコイイ女性だなぁ、と。
- 団員
- それでは、最後に、メッセージをお願いいたします!
- 藤井
-
日本人が昔から大切にしてきた自然と人との関わりや、いつの時代も変わらない恋心を詠んだ歌の世界観を、西洋音楽を学んだ作曲家・演奏者たちがどのようにつくりあげていくのか。その感動をぜひ会場で皆さんと共有できたらと願っています。
ご来場をお待ちしております!
- 団員
- どうもありがとうございました!