Ensemble Free West

第31.5回演奏会

2020年 11 月 29 日、振り返ってみると新型コロナウイルス感染症拡大の第3波が来る直前の時期となりましたが私たちは感染症対策を講じつつ、完全招待制にてクローズドの演奏会を開きました。

このようなご時世ですので、招待するのは団員の身内のみとし、広く皆様に楽しんでいただけるよう撮影と配信を主眼に置いた演奏会です。

プログラムに関しても、舞台上が密になるのを避け、それほど大きな編成ではないものの、ドヴォルザークとシベリウスの中でも特に完成度が高く、内容に深みのある作品を選びました。

また、私たちが取り組んでいる同時代の作曲家の作品を演奏する活動の一環として、2019 年にジュネーブ国際音楽コンクールの作曲部門で最優秀賞を受賞され、現在は大阪音楽大学で教鞭を取っておられる作曲家、高木日向子さんに委嘱した新作を世界初演いたしました。

このように感染症対策と従来の私たちの活動を両立させつつ、より多くのお客様に安心して音楽を楽しんでいただけるよう、これからも努力して参ります。

新型コロナウイルスが早く収束し、何の気兼ねもなくご来場いただける日が戻ってくることを心より願っております。

アンサンブル・フリー 代表 浅野 亮介


演奏会詳細

アンサンブル・フリー EAST 第 13.5 回演奏会に続き、
2020 年 11 月末に収録した演奏会の映像をストリーミング形式でお届けします。
ぜひお家でお楽しみください!
2021 年1月 29 日(金)20:00 ~
第 31.5 回演奏会
  • A. ドヴォルザーク 交響詩《野鳩》作品 110
  • 高木 日向子 And now look!(委嘱作品/世界初演)
  • A. ドヴォルザーク 交響曲第 7 番二短調 作品 70


  • * 指揮:浅野亮介

    ※収録当日に演奏した J. シベリウス 交響曲第 6 番については権利上の都合により、本配信での公開は致しません。予めご了承ください。

      *本動画についての注意事項*

    • 本動画に使われる演奏は、作曲者インタビュー部分を除き、全てアンサンブル・フリーが演奏したものです。
    • 当団では練習時&本番時に、以下の新型コロナウイルス感染症の予防対策を行っています。
      • 練習時の対応
        • 体調不良や発熱時に欠席を義務化
        • 手指消毒・発言時のマスク着用、1 時間に 1 回程度の換気等の徹底
        • 3密につながるような行動の回避
      • 公演までの 2 週間に以下に該当する場合は出演を控える。
        • 平熱より高い、または 37.5℃以上の発熱
        • 咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、味覚・嗅覚障害、関節・筋肉痛、下痢・吐き気・嘔吐
        • 陽性者との濃厚接触
        • 入国制限のある国・地域への訪問歴、または該当者との濃厚接触
      • 当日の来場者への協力依頼
        • 会場内でのマスク着用、電子チケット(teket)での入場管理、プレゼント&楽屋見舞いを禁止
      • 公演当日は、出演者、来場者ともに「大阪コロナ追跡システム」(大阪府)への登録を義務付け、感染拡大防止及び感染経路の特定に協力しています。
    • 本動画に関する情報は、公演後2週間の期間を開けて公開しています。本公演に参加・来場した人で感染した、または感染の疑いのある人の発生はありませんでした。
    • 本動画の映像、音声を無断で二次利用することはお控えください。

    新作:作曲家紹介

    高木 日向子
    高木 日向子
    Hinako Takagi

    1989 年生まれ、兵庫県出身。
    兵庫県立西宮高等学校音楽科ピアノ専攻、大阪音楽大学作曲学科作曲専攻卒業。
    給付奨学金を得て、同大学院作曲研究室修了。
    2017 年日本音楽コンクール作曲部門第 3 位(室内楽部門)。
    2019 年ジュネーブ国際音楽コンクール作曲部門において、同率 1 位。
    受賞作” Lʼ instant” は 2020 年同音楽コンクールオーボエ部門の課題曲となる。
    現在は、作曲活動に加えて、子供から大人まで幅広い世代に現代音楽を聴く楽しみを伝える活動も行っている。
    大阪音楽大学非常勤講師、大阪音楽大学付属音楽院ソルフェージュ講師。

    指揮者・団紹介

    浅野 亮介
    浅野 亮介
    Ryosuke Asano

    神戸大学国際文化学部を経て同大学院博士課程前期課程修了。
    大学院では美学理論を学び、シェーンベルクを中心とした 20 世紀初頭のドイツ音楽を軸に、古典派からロマン派まで幅広く研究対象とする。
    2000 年に関西一円からメンバーを集め、アマチュア・オーケストラ「アンサンブル・フリー」を設立。これまでに 30 回以上の演奏会を開催し、国内の優秀なソリストと数多く共演、マーラーの《交響曲第 3 番》や《大地の歌》、R・シュトラウスの《アルプス交響曲》などの大規模な楽曲にも取り組み、成功を収めている。
    2013 年に関東地方に「アンサンブル・フリー EAST」を設立。新進気鋭の若い作曲家や演奏家とコラボレートするなど、従来のクラシック音楽の傑作を紹介するとともに、新しい音楽の開拓と発展に力を注いでいる。

    アンサンブル・フリー WEST

    2000 年に京阪神を中心に活動するオーケストラとして設立。
    演奏会ごとに出演者を募集し、100 名を超える大編成の曲や、実演の機会が少ない曲にも積極的に挑戦している。
    2015 年より、新進気鋭の若手作曲家や演奏家とコラボレートする等、新しい音楽の開拓と発展にも取り組んでいる。
    また、2013 年には、主に東京で活動をするアンサンブル・フリー EAST が誕生。次世代を担う作曲家の発掘のため演奏会ごとに作品を委嘱・演奏し、また実力ある若手ソリストと共演し、演奏する場を拡げている。

    プログラムノート

    A. ドヴォルザーク
    交響詩《野鳩》作品 110

    交響詩『野鳩』はチェコの大家ドヴォルザークによって作曲された。
    彼は 9 番目の交響曲を書いた後、晩年を祖国で過ごした。
    このとき彼は同じチェコの詩人エルベンの詩集『花束』を題材とした交響詩を 4 曲立て続けに書いており、この野鳩はその最後の曲となる。
    12 編の民話が収められた詩集からドヴォルザークが選んだ 4 つには「殺人」が描かれているという共通点がある。
    先に書かれた 3 曲にはいずれも魔物や魔女、魔法使いといった想像上の存在が描かれているが、一方でこの野鳩には実在する存在しか登場しない。
    そのことがこの物語の描写をより鮮やかなものにしている。

    「野鳩」という牧歌的な印象の題名に反し、曲の冒頭は重い葬送行進曲から始まる。
    夫を亡くした若い妻の悲しみは、バイオリンで奏でられる彼女自身の嘲笑で偽りだと暗示される。

    葬儀を終えると一転、トランペットによる軽快な音楽が聞こえてくる。
    若い好青年が美しい未亡人を口説いているのだ。
    その出会いに次第に悲しみは薄れていき、そして新たな花婿・花嫁を祝う婚礼の儀式が始まる。スラブ舞曲風の音楽に乗せてしばしの幸せが過ぎていく。
    トリオ付きのスケルツォから成るこの部分では、躍動的なリズムや甘美なメロディーから登場人物達の充足した心境が窺える。

    やがて時は過ぎ、亡き夫の墓には樫の木が育つ。
    その上には一羽の白い鳩がとまり、木管楽器・弦楽器がその鳴き声を奏でる。
    その悲しげな鳴き声により、元夫の葬儀に笑みを浮かべていた女の心に陰りが差し込む。
    彼女は自らの内に秘めていた「亡き夫に毒を盛った」という事実を、その野鳩の声によって暴かれたのだ。
    バスクラリネット、 ホルンと担い手を変えながらフォルテッシモへと高まっていく主題は、罪の意識に苛まれていく女の心境の移り変わりを描いている。
    そして耐えきれなくなった彼女はついに自ら命を絶つ。

    再び葬送行進曲が始まる。
    これは自死を選んだ女のためのものである。
    重く暗い葬儀はバイオリンの独奏を挟みながらハ長調へと解決する。
    罪悪感を駆り立てた野鳩の声が流れる中で物語は長調で幕を閉じており、死を以て罪は償われ、そして赦されたのだと我々に教えてくれる。

    A. ドヴォルザーク
    交響曲第 7 番 二短調 作品 70

    第 1 楽章 Allegro maestoso(速く、堂々と) 約 11 分
    第 2 楽章 Poco adagio (やや緩やかに)約 10 分
    第 3 楽章 Scherzo, Vivace (スケルツォ、活き活きと)約 7 分
    第 4 楽章 Finale, Allegro (フィナーレ、速く) 約 9 分

    1884 ~ 1885 年にかけて作曲されたドヴォルザークが 43 歳の頃の作品。
    シューベルトやメンデルスゾーンらと同様に、ドヴォルザークについても交響曲に付せられた番号には歴史的な変遷がある。
    現在では交響曲第 6 番とされるニ長調の交響曲が最初に出版され、当時は「交響曲第 1 番」とされた関係で、続くこのニ短調の交響曲は当初「交響曲第 2 番」と呼ばれていた。

    ドヴォルザークの交響曲の中で現在でも傑作とされ演奏頻度が高いのは第 6 番以降であることが示すように、第1番から第5番(特に作曲家の生前には出版されなかった第1番から第4番)は、後年ほどの独自色と構築美を持つには至っていない。
    傑出した交響曲が 4 つしかないというのは、同じロマン派の作曲家であるブラームスやシューマンとも共通している。
    ベートーヴェン以降、交響曲のジャンルで抜きんでた作品を発表することは、当時の作曲家たちにとっては、それほど難しいことだったのである。

    リストやワーグナーなどドヴォルザークに影響を与えた作曲家は多いが、中でも大きな影響を与えたのはブラームスであろう。
    そもそもドヴォルザークの才能を認め、広くヨーロッパ諸国に知らしめたのはブラームスであった。
    ブラームスはオーストリアの国家奨学金の審査員を務めていたことからドヴォルザークの作品を知るに至り、その才能を認め出版社に紹介した。
    ドヴォルザークもブラームスを敬愛し、感謝の気持ちを込めて献呈した弦楽四重奏曲第 9 番をはじめ、ブラームスの手法を取り入れつつ多くの作品を生み出した。
    交響曲の分野でも、その痕跡を見ることができる。
    ブラームスの交響曲第 2 番とその 3 年後に作曲されたドヴォルザークの交響曲第 6 番は同じニ長調という調性を持ち、特に第 4 楽章はどちらも「Allegro con spirito」(活き活きと速く)という曲想を与えられ、構成の上でも類似点を多く指摘することができる。

    これに続くブラームスの交響曲第 3 番とドヴォルザークの交響曲第 7 番の関係は更に深い。
    1883 年、ドヴォルザークがこの交響曲第 7 番に着手する直前にブラームスは作曲中の交響曲第 3 番の一部をドヴォルザークにピアノで弾いて聴かせた。
    翌年、初演に立ち会うためベルリンまで赴いたドヴォルザークは、完成されたブラームスの交響曲第 3 番に強烈な印象を受けた。
    これはドヴォルザークが出版社に「ブラームスの第 2 番に対して第 3 番が全く新しいものであったのと同様に、私の新作であるニ短調交響曲も前作のニ長調交響曲とは全く違うものにしようと取り組んでいる」という内容の書かれた手紙を送っていることからも窺い知ることができる。

    しかし、いくら多大な影響を受けようとも、両者の間には大きな違いがある。
    劇場のコントラバス奏者であった父親から最初に音楽の手ほどきを受けたブラームスは、後に作曲家でありピアニストでもあるエドゥアルト・マルクスゼンから高度な教育を受け音楽家としてのキャリアを積んでいった一方、ドヴォルザークは 15 歳まで家業である肉屋を継ぐために修行し、正規の音楽教育は受けておらず、村の楽団やオルガン学校の音楽クラブに参加するなどして音楽に親しんだ。

    こうした幼少期からの音楽経験の違いは、二人の音楽性を大きく分けることになった。
    例えば有名なブラームスの《ハンガリー舞曲》はジプシー音楽を題材に編曲されたものであるのに対し、ブラームスから同様の民族音楽的作品を作るように勧められて作曲したドヴォルザークの《スラブ舞曲》は、民族的な要素を取り入れつつも、その旋律は全て作曲家の自作である。前者は高い作曲技術によって民族的な素材を芸術作品の域にまで高めたのに対し、後者は高い作曲技術によって新しい民族音楽を生み出してしまったのである。
    ブラームスの力を「芸術的」と呼ぶならば、ドヴォルザークの力は「芸能的」と言えるかもしれない。
    ブラームスは芸術的な理想を追求する作曲家であるのに対し、ドヴォルザークはあくまで民衆に寄り添う作曲家なのである。

    こうした特徴は、当然、交響曲第 7 番にも現れている。
    ここに用いられた土俗的なまでに力強いリズムや、歌謡曲のように口ずさみたくなる数々の旋律は、この交響曲が芸術作品というよりも、新しく生み出された巨大な民族音楽であることを示している。
    クラシック音楽は観念的な理想と人間的な感情の相剋を原動力として発展してきたが、現代に至る過程で、一方は一筋縄では理解できない現代音楽としてアカデミックな側へ、他方は分かりやすいポピュラー音楽として市場の側へと分割されてしまった。
    この作品は、それらがまだ一つの音楽として分かちがたく結びついていた古き良き時代の記録の一つである。

    高木 日向子
    And now look !
    (作曲家自身によるプログラムノート)

    “Right here, right now is where we draw the line.
    The world is waking up. And change is coming, whether you like it or not.”
    《私たちは、今この瞬間から、ここに線を引きます。
    世界は目覚めています。
    そして、あなたが好もうと好まざるとも、変化はやってきています。》

    これは、当時 16 歳だった環境活動家、グレタ・トゥンベリが 2019 年 9 月に国連本部で訴えかけたスピーチの最後の一文です。
    このスピーチは当時、世界中のメディアに取り上げられ、話題になりました。
    グレタの言うように、ここ数年の気候変動を鑑みると、確かに私たちは生活を変化させなければいけないのは明白ですが、経済を止めれば、今までの生活水準を維持できなくなります。
    人々の反応は、この対立のどちらかに属するか、メディアを通して双方をただ静観するかの三様に分かれたように思います。

    このスピーチの約半年後、新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界はあらゆる活動の制限を強いられるようになり、この “私たちが好もうが好まざろうが、変化が訪れている “という一文は、図らずも予言的なものとなりました。
    このグレタのスピーチに対する、チェコの経済学者、トマス・セドラチェクの指摘が、とても印象的でした。

    “And now look!
    We did not do it for the environment, but to save lives.”
    《そして、今ほら!環境のためにはできなかったけど、命を救うためならできたじゃないか!》

    この曲の構想を練りだしたのは、ちょうど日本が緊急事態宣言下にあった頃で、音楽家の私にとっては、様々な制限の中でも、特に演奏会が軒並み中止になるということが異常事態でした。
    それでも、どんな状況下にあっても音楽を続けていたい、そのような決意の表れのような曲を書きたいと思いました。

    J. シベリウス
    交響曲第 6 番 二短調 作品 104

    この曲の冒頭の響きは、あなたに何を思い起こさせるだろうか。

    高く澄んだ空?
    降り始めた雪?
    それとも、もっと人智を超えた何か?

    いずれにせよ、この透明な響きには誰の心をも一瞬で奪ってしまう力があるだろう。

    シベリウス自身、この作品について「他の作曲家が色とりどりのカクテルを制作している一方で、私は清らかな湧水を聴き手に提供するのだ」といったことを述べている。
    同時代の 1920 年代といえば、シェーンベルクらによる 12 音技法の試み、ストラヴィンスキーに代表される新古典主義などが開花した、一種の混沌(カオス)とでも呼ぶべき時代であったから、彼の言葉は当時の音楽界における彼の立場と、それに対する自覚をよく表しているものといえる。
    彼は同時代の先鋭的な潮流とは一線を画しながらも、自身の音楽を追求し続けてきた。
    その中でもこの交響曲第 6 番は、彼にとって一つの到達点ともいうべき作品である。

    この第 6 番は、調性としては本日のプログラム前半で演奏されるドヴォルザークの交響曲第 7番のニ短調の響きに似ていながらも、教会旋法の一つ、ドリア旋法が大半を支配しているため、ドヴォルザークの第 7 番における長調・短調(明・暗)の鋭いコントラストによるドラマチックな展開に対し、音楽は絶えず光と影のあわいを漂いながら川のように流れ続け、淡いグラデーションの世界を形成している。
    ただ、ドヴォルザークのように分かりやすい形では現れてこないものの、そこには大地から湧き上がるような情熱の炎や、大空を揺らすような叫びが確かに存在している。

    シベリウス自身も「第 6 番からはいつも初雪のにおいが思い出される」と述べたように、雄大かつ繊細な自然の風景が眼前に広がるのはもちろん、教会旋法・対位法を駆使した厳かな、そしてどこか懐かしい響きがその中に交じり合うことで、彼岸への憧憬をも感じさせる神秘的な作品となっている。
    この作品は決して単なる自然描写にとどまるものではなく、自身の病とその克服、第一次世界大戦、祖国フィンランドの独立、身近な友人の死などを経験した、シベリウス自身の葛藤や悲しみ、そして祈りが影を落としているのである。

    この作品はシベリウスの交響曲群、また音楽史上でも当然重要な位置を占める作品であるが、本日のプログラムを締めくくる一曲として、また昨今の混沌とした情勢の中でお届けする一曲として、この作品のもつ力を感じ取っていただければ幸いである。

    予告動画・関連動画のご案内

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