ヴァイオリニスト 岡本 誠司 X 指揮者 浅野亮介

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Special Interview

浅野
今日は合奏、トップ練(各パートの首席との細かい合わせ練習)に引き続きのインタビューということで、お疲れのところをありがとうございます。
岡本
いえ、合奏は遅刻してしまい申し訳ありませんでした…(←ヨーロッパ滞在中、現地時間でiPhoneのカレンダーに登録していたのが原因らしい)
浅野
大丈夫ですよ。岡本くんが来るまでにオケだけの部分を合わせておいたので、効率的に練習できました(笑) さて、今日は岡本くんがどんなヴァイオリニストなのか、多くの人に知ってもらうべく色々とお尋ねしようと思います。よろしくお願いします。
岡本
よろしくお願いします!
浅野
まずは最初の質問ですが、ヴァイオリンを始めたのはいつですか?
岡本
3歳の頃です。
両親は音楽家ではなかったのですが、私に何か習い事をさせようと思ったようで、当時「ピアノをやってみる?」と尋ねられました。その時、仲の良かった1歳年上の幼馴染の女の子がヴァイオリンを習っていまして、それが羨ましくて、「ピアノよりヴァイオリンがいい!」と言って習わせてもらったんです。
浅野
ご両親は職業音楽家ではなかったんですね。それでは、岡本くん自身がプロを目指すようになったのは、いつ頃なんですか?
岡本
私は最初、スズキ・メソードで習い始め、その後、女性の先生につきました。色々と活躍なさっている方で、私はこの方にプロでやっていく厳しさを教えていただきました。
タイミングとしては中学3年生くらいでしょうか。イタリアのカネッティ国際コンクールで第2位をいただいたあたりから、徐々にプロの道へと進むことを意識しはじめました。
浅野
やはり先生からの影響は大きかったですか?
岡本
そうですね。他にも多くの先生が教えて下さいましたが、それぞれ個性のある素晴らしい先生ばかりで、良いところを少しずつ吸収させていただいたように思います。
浅野
今まで多くの作品を演奏してきたと思いますが、その中でも好きな曲などはありますか?
岡本
そうですね…一つに絞るのは本当に難しいですが、敢えて挙げるとすればブラームスの室内楽作品です。ソナタも、カルテットも、トリオも…全て素晴らしい作品ばかりです。大好きですね。
浅野
ブラームス、僕も大好きです。特にEASTの演奏会では近現代の作品を取り上げることが多くて、団員からは「たまにはブラームスとかも演奏させろ」と突き上げられていますので、次の8月の演奏会はブラームスをプログラムに入れてみようかなと思っています(笑) 
音楽以外はどうですか?何か好きなものや趣味などはありますか?
岡本
サッカーが大好きです!小学校では地元のクラブチームに所属していたんです。
浅野
スポーツもできるんですね。文武両道…。ポジションはどこでした?
岡本
ミッドフィルダーです。
浅野
うわ、ゲームを組み立てる難しいポジションですね…!
岡本
そうですね。音楽でいうアンサンブルの大切さのようなものを学べるポジションだと思います。
浅野
好きなチームや選手などはいるんですか?
岡本
ACミランが好きでしたね。その時代にトップ下をしていたカカは、同じポジションを担当していたということもあり、大ファンでした。
浅野
音楽の道に進んでいなかったら、サッカー選手を目指していたかもしれませんね(笑)
岡本
それはありますね。子どもの頃はサッカー選手や宇宙飛行士など夢でしたから。
岡本 誠司
浅野
他にも趣味はありますか?
岡本
将棋が好きですね。それほど強くはないですけど(笑)
浅野
得意な戦法とか、あります?
岡本
居飛車で矢倉とかですかね…
浅野
僕も弱いですけど、将棋できますよ。今度やってみましょう。
岡本
いいですね!是非!
浅野
ゲームや勝負事が好きなんですか?
岡本
先を読んでいく…というのは音楽と通じるかもしれません。あと、負けず嫌いな性格はありますね。
浅野
気が強くないとソリストはできませんよね…(笑) 兄弟はいらっしゃいます?
岡本
いえ、一人っ子です。そのせいか、人に頼ったり合わせたりするのは苦手です。特に「できないから」という理由で「とりあえず他の人と同じように…」みたいな流れになるのは嫌ですね。
浅野
岡本くんはまだ22歳と、とても若いですが、それでも色々な経験をされてきたと思います。どういう時が一番辛いですか?
岡本
努力した分、結果がついて来るとは限らないですからね…そういう時は辛いです。辛いことのほうが多いんですが、1回拍手をいただくと全て忘れますね。単純ですね(笑)
浅野
逆に、どういう時に喜びを感じますか?
岡本
大きな本番…「大きな」と言っても規模の問題ではなくて、自分の心の中で大きな部分を占める本番という意味ですが、そのような依頼を受けて上手くこなせた時ですね。
特に個人で行うリサイタルは、私にとって大切な本番です。約2時間のリサイタルを1人だけで作るのは大変です。年に3~4回のペースで機会をいただいているのですが、そこで自分の成長を感じられた時は、とても嬉しいですね。
岡本 誠司
浅野
岡本くんはリサイタルの他にも、たくさんのコンクールに出場していますね。
岡本
そうですね。第1位をいただいたライプツィヒのバッハ国際コンクールや…先日はヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで第2位をいただきました。
浅野
バッハ国際コンクールの優勝は日本人では初めてということで、大きな話題になりました。
岡本
あのコンクールは、バッハと同時代の曲目ばかり弾かなければならない、特別なコンクールですね。
浅野
バロックの世界って、とても深いですよね。それだけで一生が終わってしまうくらい。しかし、岡本くんはバロックだけでなく、ロマン派から現代音楽まで幅広くレパートリーとしています。バロックは、どうやって勉強したのですか?
岡本
確かにバロックの世界は深く、そして魅力的です。私は縁があってそちらの方面でも様々な先生にレッスンしていただき、多くを学びました。一時期は古楽専門の方向に進もうかと思ったくらいハマりましたね。
浅野
バロックと他の時代の作品では、やはり演奏者としてアプローチを変えますか?
岡本
そうですね。バッハコンクールとヴィエニャフスキコンクールでは、やはり扱う作品の時代も違いますし、演奏者としても弾き分けました。
浅野
岡本くんにとって、コンクールとは?
岡本
自分を試し、自分を見つめ直す機会です。人と比べられる厳しい環境の中で何ができるのか常に考えながら挑戦しています。
浅野
ヴィエニャフスキコンクール、優勝したトルコの女性は素晴らしい演奏でしたね。しかし、やはり2位だと悔しいものですか?
岡本
いえ、順位はあまり気にしません。彼女は本当に豊かな音楽性を持っていました。私も納得の一位です。例えば去年はシベリウス国際ヴァイオリンコンクールに挑戦しましたが、結果は落選でした。しかし、ここでも得るものがたくさんありました。私にとっては作品をどのように捉え、聴いていただく方々にどのように伝えるか…そのほうが順位よりも大切です。
浅野
あまりコンクール向きの性格じゃないですね…(笑)
岡本
実は日本でもいくつかのコンクールに挑戦しましたが、結果が良くないときは何度もありました。自分でもコンクールには向いていないと思いますが、だからこそ挑戦する価値があるのだと思います。
高い順位を取って嬉しいのは、多くの方に私のこと、私の演奏を知っていただく機会を与えてもらえる…ということですね。そのような意味では、バッハコンクールで優勝した時は特に、とても嬉しかったです。
浅野
言葉の端々に負けず嫌いな性格が見えますね…。一体どんな練習をしているのですか?
岡本
自分で考えることを一番大切にしています。
どんなに素晴らしい先生に教えていただいても、私は私でしかありません。先生とは体格も違います。手の大きさも違います。先生と全く同じことをしても上手くいくとは限りません。
自分に合った練習方法、自分にあった音の出し方を自分で考え、常に試行錯誤しています。
浅野
時間がかかりそうですね。
岡本
はい、最初は全く効率的な練習とは言えませんでした。
でも、最近、やっと実になってきたと感じます。自分にとって一番良い練習方法を模索し続けてきたわけですので、それが実になり始めると、逆にそれが最も効率的な練習のように思えます。そして、このような試行錯誤にお付き合い下さった先生方に、とても感謝しています。
岡本 誠司
浅野
とても強靭な精神力ですね…。
「実になってきた」と感じられるまでは、出口の見えないとても厳しい作業だったとお察しします。先生と言えば、今回の委嘱作品をお願いした作曲家の神本真理さんは、岡本くんのソルフェージュの先生だったとお聞きしました。
岡本
はい、大学の授業で教えていただきました。
浅野
どんな先生でしたか?
岡本
しっかりとした考えをお持ちの方です。決して雰囲気に流されない芯の強い方だと思います。ソルフェージュの基礎をしっかりと教えていただきました。
浅野
ほう…それはとても興味深いですね。僕はあの方の作品からは女性的なものを強く感じます。
官能的な雰囲気が濃厚な作品ですよ。どうやら神本さんは「教師」としての顔、「作曲家」としての顔、色んな顔をお持ちのようです。
岡本
それは…演奏会で是非、拝聴したいです!
浅野
楽しみにしていて下さい。教師としての神本さんとは全く違った側面をお聴かせできるよう頑張ります。バーバーのヴァイオリン協奏曲のほうは如何ですか?難しいですか?
岡本
そうですね。まずもってバーバーという作曲家の作品を演奏したことがなかったので、その世界観を掴むところから苦労しますね。
浅野
どんな曲だと感じていますか?
岡本
20世紀という時代においては珍しく爽やかな作品だと感じています。思い詰めた様子ではなく、昔を懐かしんでいるようなナチュラルな、素直な作品ですね。
浅野
聴きどころは、どんなところでしょうか?
岡本
どの楽章も説明なしに、心で楽しめるところだと思います。
浅野
岡本くんは、これからどんな音楽家を目指しますか?
岡本
より多くの人にヴァイオリンの良さ、クラシック音楽の良さを伝えていきたいです。
昨今、クラシック音楽離れが懸念されていますが、クラシックを専門にする人の中でも心がクラシックから離れている人が出始めているように感じています。

全体の熱量が下がっているというか…。そんな中で皆さんと音楽の魅力を共有したいですし、魅力を伝達するメッセンジャーとして仕事をしていきたいと考えています。
浅野
クラシックを専門として生活していく…本当に大変なことですよね。
しかし、岡本くんと同じ世代の人たち…例えば昨年3月に共演したファゴットの浦田くん、指揮を手伝ってもらっている作曲科の浦部くん、その他いっぱい、大きな熱量を持った若い演奏家、音楽家を見出すにつけ、僕は未来に希望を持つことができています。若い世代の人たちには是非とも熱意を失うことなく頑張って欲しいです。

最後に、今回の演奏会について一言、いただいてもよろしいでしょうか。
岡本
今回の演奏会はバーバーの協奏曲だけでなく、全体になかなか聴けない作品が揃っています。
食べ慣れたものには安心感がありますが、是非、新しい味にもチャレンジして欲しいと思います。食わず嫌いではなく、食べてみて好きになるか嫌いになるか試して欲しいです。

新しい景色が見たい方、人生に新しいものを取り入れたい方には最適の演奏会だと思いますので、是非ご来場下さい!
浅野
長い時間、ありがとうございました!演奏会、頑張りましょう!!
岡本 誠司

岡本さん、ありがとうございました!